聖母のようだった


basu

ちょうど科学館からの帰りにバスに乗ると大きなベビーカーが補助座席の
隣に置いてあって、その席にお母さんが座って子供をあやしていた。

その子供はおそらく小学生1年くらいの男の子だと思うのだが
体は非常に細くて自立することもできないほどだった。
鼻には呼吸用のチューブが通っていた。

その日は外の気温が高かったこともあって
バスの中もすこしジメジメとしていた。
その子供はおそらくその不快感に耐えられなかったのだろう。
突然大きな声で泣き出したのだった。

それを母親は周りにごめんなさいといいながら細く力のない
子供の手を握りながら落ち着かせるのであった。
子供が泣いた理由が母親にあるわけではないのだから
謝られるとこちらの方が申し訳ない気持ちになってしまう。
そして泣く子供に対しても怒りを表さず、ただ優しいまなざしを向けながら
手を握り続ける母親の姿に聖母に近いものを感じたのだった。

今まで聖母子像と名のつく名画をいろいろ見てきたけれど
現実に本当にこんな光景がしかもバスの中で起こるんだなと思った。
神々しい何かを感じずにはいられなかった。

その母親が子供の手を握っている間、
子供はぴたっと泣き止んだ。
そして大きなベビーカーをその母親は押して下車して行った。

世の中には子供に暴力をふるったり
子供に好き放題させて何も注意しないでスマホに釘付けの
母親なんかがいるんだけれどもそういう母親ばっかりじゃないんだろうな。
おそらくあのお母さんはあの小さな子どもの世話をしているうちに
自然と周りや子供に注意を払うようになったのだろう。
なるべく迷惑をかけないように、子供が傷つかないように
そんな母親を聖母と言わずしてなんと形容すればいいんだろう。

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