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タイムケーキ


とある街に一生に一度しか食べられない
ケーキをだす店がありました。

Aさんは甘いものが大好きで
そのお店にかねがね行きたいと
思っていたのですが、そのお店で
出されるケーキを食べると死ぬと
聞いていて躊躇していました。

そんなAさんは働いている会社を首になり
恋人にも別れを告げられ、父母も亡くなり
飼い猫まで死んでしまい、家も家事で燃えて
しまい意気消沈し生きる活力を失って
しまいました。

どうせ死ぬなら美味しいものを食べたい。
となけなしのお金を手に例のケーキ屋へ
向かいました。
店は地下にあって、階段をおりて行かねばなりません。

店のとを開けると
年老いたパティシエが新聞を見ながら
席に座っていました。
Aさんはパティシエにお金を渡そうと
しましたがパティシエはお金を受け取りません。その代わりに今までAさんがどんな不幸な
めにあって来たのか聞かせて欲しいと
言いました。Aさんは今までの悲哀を
涙ながらに語りました。

話を聞き終わるとパティシエは
よっこいしょと言ってキッチンへ
入って行きました。それから2時間ほど経って
大きなケーキが運ばれて来ました。

Aさんは食べきれないほどのケーキを
大きく切り取って勢い良くほうばりました。
そのケーキはただのスポンジケーキなのだが
非常に濃厚な味でかつ後を引かない
不思議な味わいだった。

最初はたくさんあって食べきれないほど
だと思っていましたが、3分の2ほど平らげた
ところでふと手が止まりました。

本当に残りの3分の1を食べると自分は死ぬの
だろうか?不安になってパティシエに
尋ねるとパティシエはこう言った。

このケーキはお前の一生だ。
最初はたくさん時間があって
まだまだ余裕だと思うだろう、
だが残り少なくなると食べる量は
おのずと少なくなる。
一口一口が惜しくなる。

子供の頃はたくさんあって1日が長いけれど
大人になると急に短くなる。
気がついたら死んでいる。
人生ってそんなもんさ。

Aさんは気がついた。
このケーキを食べると死ぬという
意味が。何人もの人が
死ぬ覚悟でこの店に来てケーキを食べて
今選ばなくともいつか死ぬということ
残ったケーキは自分に残された時間である
ということに。

Aさんは残りのケーキを食べた。
味わってゆっくり食べた。
もちろんケーキを食べ終わっても
死にはしない。

Aさんは満足に笑みを浮かべると
店を出て行ったのであった。

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