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インターホン

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ある平日の午後、A君は着慣れないスーツに身を包んで
ある町の歩道を歩いていた。ちょうど採用の一次試験控えており
あと10分以内に会場へ到着しないといけないのであるが
そこまでの道で大いに迷って携帯電話片手に右往左往していたのだ。

「僕はどこへ行けばいいんですか?」
と道ゆく人に尋ねるが、誰1人として取り合ってくれない。
横断歩道で待っていた老人は
「行きたいところへ行けばいい」となんとも素っ気なかった。

そうこうしている間に、試験時間5分前になった。
もう間に合いそうもない、
でも第一志望の会社でもないし、とにかく早く就活を終わらせたいという
気持ちだけで応募した数ある中の一社でしかないのだから
今日一日ばっくれたところでその後に及んで後悔することもないだろうと
思った彼は途中で歩く速度を落とした。

ところが、始めて来た街で急いだせいもあって
帰り道がわからなくなってしまった。
面接時間は過ぎた、それと同時に空が曇り始めた、
今にも雨が降りそうだった。

空を見上げた視界の隅に大きく天を刺すような
白いビルが映る。
そういえばさっきはあのビルがもっと近くに見えていたような気がする
とりあえずあのビルを目指して歩こうと方向転換して歩き始めた。

そのビルに近づくに連れてあまりの大きさに目を見張った。
ビルに導かれるまま彼は歩き続け、気がつくとそのビルのちょうど真下についた。
そのビルは入り口はなく、あるのは三つのインターホンだけだった。

インターホンにはそれぞれ
「現在」「過去」「未来」とある。

彼はそのボタンを押して見ることにした。
まず手始めに現在から押して見る
「もしもし?」
「もしもし?」
「あの、このビルは一体なんですか?」
「さあ…」
「あなたは誰ですか?」
「あんたこそ誰だ」
「私は道に迷ってここにやって来た」
「私もだよ」
「ここから駅へ行きたいんだがどう行けばいい?」
「知らないなぁ」
「もういいです、失礼しました」
とインターフォンを切った。

Aはため息をついてその場を立ち去ろうとした、
かといってどうすれば駅へたどり着けるか皆目検討もつかない、
携帯電話も充電が切れていた。
振り返って一歩踏み出そうとした時背後から声がする
「もしもし?」
踵を返し確認すると過去のインターフォンから声がする。
「もしもし」
「あの、このビルは一体なんなんですか?」
「さあ…」
「あなたは誰ですか?」
「あんたこそ誰だよ」
「私は道に迷ってここに来た」
「私もだよ」
「ここから駅へ行きたいんだがどうすればいい?」
「知らないなあ」
「もういいです失礼しました」
そう言ってインターフォンが切れた。

おかしいなんだか自分と喋っているような気がする。
もしかしてこのインターフォンは時間を隔てて会話できるのかもしれない。
とすると未来のインターフォンは彼がいる現在よりも先の彼がいるという
ことだろうか?いや待て、今この状態で未来の自分と会話したところで
さっきの現在と過去のやりとりを往復するだけではないだろうか。

雨が降って来た。
彼はビルの屋根のしたに雨宿りをし
しばし考えた。この堂々巡りの現状を打破するためには
どうすべきか考えた。
そして思い立った、彼は未来のインターフォンを押した。
「ざー」
そこには雨音が聞こえるだけだった。
やっぱりそうだった、思ったとおり。
それを確認して彼も歩き出すことを決めた。
雨が強く降っている。
また道に迷うかもしれないがそれでもそこにとどまるよりは
マシだろうと思った。

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